総予測2024#24Photo:JIJI

2023年は芸能界の常識が崩れ去った1年だった。旧ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害が明るみになり、芸能界の序列が大きく変わったのだ。騒動の裏で関係者はどう動いていたのか。特集『総予測2024』の本稿では、各メディアの“ジャニ担”記者が、今だから言える舞台裏を明かす。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実)

参加者プロフィール
記者A フリー芸能担当記者(40代)。ジャニーズタレントからの情報も集まる敏腕記者。
記者B 女性週刊誌芸能担当記者(30代)。ドラマや映画の制作現場に人脈あり。
記者C スポーツ紙芸能担当記者(30代)。大手芸能事務所を担当し、音楽業界に詳しい。

ジャニーズからの脱出を試みる人も
転職希望先は“因縁”のあの事務所

 2023年3月、英BBCが1本のドキュメンタリー番組を放送し、日本の芸能界が抱えてきた“パンドラの箱”が開けられた。

 番組では、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の創業者・故喜多川擴(ジャニー喜多川)氏による性加害が被害者によって語られたほか、メディアによる同事務所への忖度も追及された。

 以降、同社のタレントを起用していたクライアント企業はジャニーズと距離を置き始め、同事務所は“崩壊”の過程に入っている。

 激動の一年を現場で見聞きした各メディアの芸能記者はどう感じたのか。また、裏側では何が起こっていたのか。本音を語ってもらった。

――性加害騒動で社内ではどんな動きがありましたか?

記者B うちの出版社からは毎年、ジャニーズの公式カレンダーを出版していました。売り上げは何億円規模で、カレンダーを出せないのは正直痛い。23年は各社、一斉に出さないことになりましたが、決定の直前まで社内では「他社が出さないなら、うちが引き取るべきだ」という意見と、「海外での漫画事業に影響があるので、手を引くべきだ」という意見がぶつかっていました。

――元V6の岡田准一氏や嵐の二宮和也氏など、退所を選択するタレントも相次ぎました。タレントはどう動いているのでしょうか。

記者B 残っているタレントは新会社に移籍する予定です。ジャニーズを選んだタレントは意外にもあっけらかんとしている。会見直後にもかかわらず、ドラマの顔合わせの現場で「SMILE-UP.から来ました~!」と元気よく自己紹介をして、笑いを取ったタレントもいたそうです。

記者A 神経が太くないと芸能界では生き残れないですからね。性加害騒動を受けて改名したグループのあるメンバーは、発表前夜に東京・西麻布で若手俳優のNや人気YouTuberと飲んでいましたよ。

記者C 退所を選択するのは、俳優業をメインに考えているタレントでしょう。司会業を軸にしているタレントは「僕は絶対に辞めませんから」とテレビ局の社員に宣言していた。

 Netflixなどの海外大型作品では、ギャラが億単位といわれています。日本の作品とは桁が違うんです。海外の制作現場ではコンプライアンスが重視されるので、“ジャニーズタレント”であることが足かせになる可能性がある。

――ジャニーズの社員はどう動いているのでしょうか。

記者B タレントを担当しているマネジャーも新会社に移籍します。新会社の詳細や契約内容は2度目の会見から数週間たっても聞かされていなかったとか。正直、いまテレビ局や制作会社に営業をしても、ジャニーズタレントが起用される可能性は低い。進めていた話もストップしたりなどで、珍しく暇をしていると笑顔を見せていました。

記者A 元SMAPで新しい地図を結成した稲垣吾郎、草彅剛(くさなぎ・つよし)、香取慎吾の3氏が所属している「CULEN」に転職できないかと連絡する人も複数いるようです。でも、CULENも3人以外の他のタレントが所属する予定はなく、スタッフを増やす必要はないのだとか。

旧ジャニーズ事務所は12月8日、新会社「STARTO ENTERTAINMENT」の発足を発表した。代表取締役に就任したのは、外部から招聘した福田淳氏だ。旧体制でジャニーズ事務所や複数の関連子会社でトップに就任していた、藤島ジュリー景子氏はSMILE-UP.の代表取締役として、被害者への補償業務に専念するという。

藤島氏は創業者による性加害の噂を知りつつも、“沈黙”を貫いてきた。その罪は軽くない。次のページでは、社員が語った藤島氏への思いや、広報担当として長年、メディアに圧力をかけてきたとされる“黒幕”白波瀬傑氏の実像、さらには大手広告代理店ほか企業との関係に迫る。