精密検査に行かない理由の「内視鏡は痛くて辛そう」「恥ずかしい」というイメージを減らそうという試みは進んでいる。麻酔や鎮痛剤を使った、痛みや緊張感のない検査は広がっていて、僕が受けている検査も“寝ている間に終わる”ものだ。

 ちなみに、僕の祖父は大腸がんで亡くなっている。認知機能の衰えもなくすごく健康で、95歳で車を運転できるほど元気だったにもかかわらず、だ。便潜血検査で陽性がずっと出ていて精密検査の案内が来ているのに、「便が出にくくなったからかな」とか言いつつほったらかしにしていて、ようやく検査をした時には大腸がんはステージ4で、肺にも転移していた。僕は一緒に住んでいなかったからどうしようもなかった。大腸がんの手術はうまくいったけど、最終的には転移した肺が悪化して亡くなった。苦しかったと思う。そして「なんで死ぬの」と怒りすら覚えた。もう、アホだなと。僕は、こういうことを変えていきたい。

「大腸がんは救える疾患です。私も大腸がんを取り巻く現状にもどかしさを感じています。早期発見できれば、内視鏡による限られた部位の切除などで済む場合があるので、患者さんはもちろん、医師や医療スタッフの負担も減ります。そのぶん難治性のがんの治療や研究の人員を増やすこともできる。がん検診の啓発の強化を含めて、変えていきたいと考えています」と松田教授もおっしゃっていた。

 僕は検診に行かずに放置する人を、なんとか引っ張り出したい。一人でも多く、大腸がんで無駄死にしないために。

*便潜血検査…2日分の便で便に血液が混じってないかを調べる検査。混じっている場合は陽性になる