測定結果を聞くために、クリニックを再び受診して堀江教授の説明を受けた。堀江教授の所見はこうだった。

「総テストステロン値はあまり高くはありませんが、フリーテストステロン値は高いです。フリーテストステロンとは『遊離型テストステロン』とも呼ばれるもので、心身の症状との相関性も明らかになっています。我々はこの2つの数値を見て判断するのですが、良いパターンですね。血液のデータ自体も非常に良く、亜鉛の数値も十分で、食生活が良いことがわかります。ビタミンDもまあまあいいですが、サプリを少し足してもいいかもしれません」(堀江教授)

 テストステロン補充が必要という結果ではなかったが、モニターとして試用させてもらうこととなった。堀江教授が開発に関わったテストステロンゲルである。チューブ入りで皮膚に塗るだけなので使い方は簡単。基本的にはどこに塗ってもいいが、あまり毛が生えていないところがベターらしい。

「テストステロン補充に関して、ものすごくニーズがあるのがアメリカです。定年制度がないこともあるでしょうが、70歳を過ぎたお爺さんでも仕事をしているわけです。筋力が落ちて仕事に影響しないようにとか、93歳で会社の社長を続けているからという理由でテストステロン補充をしている。私が出会った高齢の方々は、皆、姿勢も話し方もとてもピシッとされていました」(堀江教授)

 こんなに簡単に使える薬があるのに、テストステロン減少が原因とも知らず、さまざまな症状に耐えている人がいるのが日本の現状なのだ。