肯定的なものには、「どこの配属先になるか分からないまま選考を受けるよりも、細かく職種別になっているほうが確実に自分のやりたい職種で受けることが出来るので就活がやりやすい」「事前に職種別に分けられていると、配属される部署がある程度明確になり、不安が解消されそう」という意見がありました。一方で、「職種による適性が学生の立場からはわからないと思うので、職種別より総合職として採用した方が学生と企業のためになると思う」「結局働いてみないとわからないことが大半だと思うので、働いていく中で自分に合う仕事、職種を見つけるのが良いと考えている」という否定的な声も。

 他に中立的な意見として、「あらかじめ自分の就きたい職を選択するのも良いが、自分の知らない適性を企業側が提示してくれる場合もあるので一概に職種を限定するべきではないと思う」「やりたいことが決まっている人は、確約コースを選択すれば良く、決まっていないのなら、企業側に適性等を見てもらってから委ねる方式で問題ないと思う」など、本人の志向に沿って選べる採用の在り方を支持する声も寄せられました。

入口の段階で道を狭めなくても大丈夫
入社後もキャリアの選択肢は広がっている

 働き方の価値観が多様化する今、企業に求められているのは、さまざまな選択肢を提示することでしょう。企業都合に人材を当てはめるような一律的な人事施策ではなく、個人の思いや求める働き方に丁寧に耳を傾け、それぞれにマッチした入り口を設けることが大事になっています。

 前述の学生からのコメントにあったように、就職活動の時点で見えている「やりたいこと」や「自分の適性」が本当に合っているかわからないという面もあります。想定していなかったキャリアに出会うことで、自分では気づかなかった強みが引き出されることもあるでしょう。

 コース別採用、職種別採用などで入口は分けながらも、入社後に一定期間経験を積んだあとは、本人のキャリアパス意向にそって異動などのジョブローテーション機会を用意している企業も多くあります。

 就職活動を通じて、学生は、「やりたいことを明確にしなくては」「自分の得意や強みを理解して、自分に合ったコースを選ばなくては」と思ってしまいがちです。保護者の皆さんには、入社後にも選択肢が広がっていることをお子さんに伝えながら、どんなキャリアを歩んでいきたいのかを一緒に考えていってほしいと思っています。入社時にやりたいことが見えていなくても、仕事を通じて見えてくることがあると伝わるだけで、お子さんの不安を軽くすることができるかもしれません。

(リクルート就職みらい研究所所長 栗田貴祥)