近藤 本当はそれより前、2000年に東証マザーズに上場することが決定していたんですね。きっかけは、28歳のときにあるテレビ番組に出たことです。青年実業家というのがちょっと世間ではやり出していて、密着取材を受けたんです。

 撮影の最後に、東京タワーの明かりをバックに夢を語ってくれと言われて、僕の夢は2つあると。日本一になりたい、もう一つは上場すると言ったんです。

井上 宣言してしまった。

近藤 はい。だけどまだ新興市場はなかったし、上場なんかできるタイミングでもなかった。当時は社員も10人しかいなかったんですよ。

 先輩たちからは、「お前、アホか」と言われました。「できるわけないだろ」って。上場というのは、こうでこうでと説明されているうちに、本当に上場に興味を持っちゃった。

井上 初めて知ったんですね、上場とは何かを。

近藤 そうなんです(笑)。上場って勝手にするんじゃないのと思ってましたから。大手企業と同じように、あるとき突然、上場会社といわれるんじゃないかと思っていた。「無知こそ無敵」だったんですね(笑)

井上 (笑)

近藤太香巳氏近藤太香巳氏 Photo by Motoyuki Ishibashi

近藤 それで上場ってカッコいいなと思って、社員みんなに「上場させようぜ」って話をしたら、「上場って何ですか?」と。じゃあ、日本で知ってる会社の名前あげてみろとって言ったら、ソニーとかホンダとか松下とか言うじゃないすか。

井上 はい。

近藤 そういうことや!って(笑)。そうなることが上場やと。それでみんなで「ウォー!」ってなって、上場を目指すことになったんです。

 その後、孫さんがアメリカからナスダックを持ってきたわけです。大阪証券取引所にナスダック・ジャパンができたおかげで上場のハードルが少し低くなった。当時はネクステルいう社名だったんですが、東証マザーズに上場申請が通って、2000年4月25日に上場することが決定し、メディアでも大きく取り上げられました。

井上 すごいですね。

近藤 ところがITバブルが弾けて、上場の2週間前に東証からから取り消しを言われるわけですよ。もう社内には胡蝶蘭がいっぱい並んでいました。