人事担当者の“孤独感”を解消していく「外部プロ人事」とは何か?

人的資本経営、社員のメンタルヘルス、新卒採用の早期化&長期化、アルムナイ対応、社員研修、テレワーク管理……働き方改革やコロナ禍を経て、企業・団体の多くの“人事”担当者は、自分の有給休暇の取得がままならないほど、日々、多忙な業務に追われている。総務・経理・人事といったバックヤード部門は専門性が求められるものの、力量のある正社員をなかなか補充できないこともその要因のひとつだ。そうしたなか、自社組織外の即戦力のプロフェッショナル人事専門家を「外部プロ人事」と呼び、事業を展開している企業がある。その代表者・門馬貴裕さん(株式会社コーナー 代表取締役)の「HRオンライン」への寄稿を送る。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

“孤独感”を覚えている人事担当者は珍しくない

 はじめまして。プロフェッショナル人事シェアリングサービス「CORNER(*1)」を運営している代表の門馬貴裕です。私たちは、採用/労務/制度設計/組織・人材開発/人的資本の情報開示/DE&I推進など、人事周りの事業課題に対し、“即戦力のプロフェッショナル人事専門家”(以降:外部プロ人事)を通じて課題解決する支援を、各企業を対象に行っています。

*1 株式会社コーナーが行う「人事・採用領域に特化した課題解決支援サービス」

 事業を始めて約5年――さまざまな企業の、あらゆる人事部門の現場を見てきた私が感じたことをもとに、私たちが「外部プロ人事」と呼ぶ方々の役割と価値をお話しさせていただきます。

 企業経営や事業戦略の推進に欠かせないのが、「人事・組織戦略」です。その人事・組織戦略を担う部門(主に人事部)への、経営陣や事業責任者の期待は年々高くなっていますが、人材採用・定着・育成・労務など、多岐にわたる専門領域を「人事」という職種でひとくくりに捉えられてしまっている難しさを私は常々感じています。

 企業の経営や事業の成長に必要な人事戦略を遂行するのも「人事」部門、従業員の相談先になるのも得てして「人事」部門です。「人事」担当者の仕事は、評価制度や報酬に対する納得感や不満、組織に対する期待や不満といった従業員の声を受け止めるだけでなく、退職や休職する従業員への対応などもあります。結果、「人事」部門は、経営陣・事業責任者と従業員の間の板挟みになるシーンが多く、どちらに寄り過ぎることもない“適切な判断と実行”が必要とされるポジションになっています。

 従業員の採用からオンボーディング、育成/人材開発、定着、そして、退職まで、従業員の会社生活のケアを一貫して担うことに加え、近年では、人事関連マターの複雑性が増し、よりいっそう、各領域においての専門性が求められるようになりました。少子高齢化に伴う労働力人口の減少、副業解禁に伴うモデル就業規則の改定、雇用形態・柔軟な働き方を選択できる世の中への適応、人的資本経営に伴う非財務情報の開示、株主やステークホルダーに対するKPIや改善施策の検討と実行……などなど、挙げればキリがないほどです。

 こうした面から、各企業の人事担当者は、経営に最も影響を与える役割だと言っても過言ではありません。しかし、重要な役割を担っているにもかかわらず、どの企業でも、人事のポジションも、その専門性も不足している状態が続いています。いまでこそ、HRBP(*2)が定着してきた印象はありますが、まだまだ、人事関連マターがビジネスに与えるインパクトや重要性について理解している企業は多くないと、私は見ています。

*2 HRBPとは、「Human Resource Business Partner」の頭文字を取った言葉で、経営者や事業責任者のビジネスパートナーとしての視点から、組織の成長を促す戦略人事のプロを指す

 たしかに、自社の正社員として、専門性を持った人事担当者を即戦力採用することは簡単ではありません。かといって、正社員が人事関連マターをしっかりと学び、経験していくことは時間的にも難しい現状があります。また、個人情報や機密情報を扱うケースも多く、他社の人事との交流もクローズドになりがちです。そのため、「新たな情報をどのようにインプットすればいいのか?」と、頭を悩ませながら、「孤独感」を覚える人事担当者も多いようです。