上場し、ステークホルダーが増えた結果つくったポリシー

佐宗 さらに今回、理念体系に「ポリシー(判断指針)」を追加されましたよね。これにはどういうご意図があるのでしょう?

青木 そうなんです。先ほど「板挟みをいい感じでなんとかしていくのが仕事だ」とお話ししましたが、上場した結果、クラシコムにも投資家、株主ができました。また、上場企業になったことでメディアとの付き合いも増えて、社会的に要求されることも増えています。要するに「板挟み」が増えたわけです。

現場はミッションとマニフェストに合うように日々の判断をしていかなければいけません。迷うことは多いし、絶対の正解はないわけです。だからこそ、ステークホルダーと話し合いながら決めていくことが大事になる。しかし、対話をするときには「変えられないもの」を明確にしておく必要があるんですよ。

「変えられないもの」がわからないまま対話に臨むと「やり取りをしているうちに、変えるべきでない部分を不用意に変えさせられてしまうのではないか」という警戒心が生まれて、へんにガードが固くなってしまう。これだと対話がうまくいきません。

佐宗 なるほど! 「変えられないもの」がはっきりしていれば、それ以外のところについては変更の余地があるものになるので、安心して対話できるようになるわけですね。

青木 そのとおりです。その「変えられないもの」を定めたのが「ポリシー」です。当初出てきたのが「誠実であること」だったのですが、この言葉だけだとどうも扱いにくい。そこでこの言葉を「正直、公正、親切」の3つに分解し、この順で大事にしようと決めました。

佐宗 おもしろいですね。さまざまな綻びを直すために、少しずつ理念体系を整備してこられた経緯がよくわかりました。次回からは、クラシコムでの理念の使い方などについて、もう少し詳しく聞かせてください。

 「北欧、暮らしの道具店」を生んだクラシコムは、理念体系をどう整備してきたのか?

(次に続く)