新卒採用に力を入れ、16年から毎年、継続して採用を行うことができた。今、働いている社員が辞めてしまうと会社が立ちゆかない、ということになってしまえば、改革の決断も鈍ってしまうが、新卒採用ができていたので、こうした事態に陥らなかった。

 新卒採用の比率が全体の3分の1を超えたあたりから会社は劇的に変わることが多いが、ワークスマイルラボも、まさにその通りとなった。

 これには、新卒採用への社長の徹底的なこだわりも大きい。中小企業は大企業のような採用方法も、内定辞退を見越した多めの採用もできない。そこで、内定辞退をされない採用、ワークスマイルラボを第一志望にしてくれる学生を増やすことに傾注したのである。

 知名度でも商品力でも圧倒的な一番と言えるものがないとわかっていた石井社長は、経営理念とビジョンを打ち出し、それらへの共感を一義に採用を心掛けた。

 働き方改革という言葉が時流になったこともあり、働き方改革をお手伝いしていくという事業内容は、学生からも大きな共感を集めることになった。こうして、採用力が大きく上がっていった。

 また、採用活動には全社員が学生と接点を持つ「全員採用」も学生から高い支持を得ている。

 岡山県の就職人気ランキングでは、ベネッセや両備グループ、中国銀行などに混じって上位にランキングされるようになり、山陽新聞の調査で22年にはとうとう人気ランキングで1位を獲得。採用数も6人となった。今やエントリーからの競争率は19倍を超える。

 経営理念やビジョンに共感した新卒社員が増えていったことは、既存社員への経営理念やビジョンの浸透にもつながっていった。これが、会社自体を変えていく大きな要素となった。

 若い社員が多いが、業務はある程度、体系化されている。顧客の課題を聞き、それに対して適切な解決策を提案していくというよりは、顧客が「自分たちもこれをやりたい」と思われるような事例を紹介していくビジネスだからだ。

 コンサルティングのような難易度がなく、事例紹介サービスだからこそ、経験の浅い若い社員でも対応ができる。もちろん、コンサルティング的な要素も経験するため、人材育成にも余念がない。20代でコンサルタントの名刺を持っている社員もいる。