TSMCvsインテル AI半導体決戦#6Photo:Chip Somodevilla/gettyimages

米国は半導体産業を後押しする「CHIPS法(半導体産業支援法)」を積極的に推進し、米インテルに最大195億ドル(約2.9兆円)の支援を決定。国内の先端半導体製造のサプライチェーン再建を加速させている。同時に中国の成熟プロセスの半導体製造を抑制する方針で、米中半導体戦争は新たな局面を迎えそうだ。特集『TSMCvsインテル AI半導体決戦』(全6回)の最終回では、米国が半導体産業で復権するための五つの課題に迫る。(台湾「財訊」林宏達、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

インテルに補助金85億ドルと融資110億ドル
ついに動きだした米国のCHIPS法

 ジョー・バイデン米バイデン大統領は2022年8月、「CHIPS法(半導体産業支援法)」に署名。米半導体産業が成長軌道に戻れるよう、527億ドルを投資して支援すると表明した。そして今年2月、いよいよCHIPS法が動きだした。

 CHIPS法で投資される527億ドルは、半導体製造の補助金として390億ドルが、半導体の研究開発支援に110億ドルが使われる予定だ。ところが、過去1年半で米商務省が利用したのは、それぞれ2億ドル未満の小規模な補助金2件だけだった。

 しかし2月9日、同省傘下の米国立標準技術研究所(NIST)が、半導体のパッケージングや検査、ウエハー製造などを研究する米国立半導体技術センター(NSTC)のプロジェクトに50億ドルを投資すると発表した。

 これは始まりにすぎない。ジーナ・レモンド米商務長官は昨年12月、「来年には大きく動くだろう」と言及している。補助金は1年間で12件採択され、その一部は数十億ドルに達すると言い、「米国の半導体製造は再構築されるだろう」とした。

 そして3月20日、米政府はインテルに最大85億ドル(約1.3兆円)の補助金を支給すると発表した。また補助金に加えて最大110億ドルの融資も予定しており、支援総額は195億ドル(約2.9兆円)とCHIPS法で最大のものになる見込みだ。これを受け、インテルは5年間で米国に1000億ドルの投資を進める方針である。

米アリゾナ州のインテルの半導体工場でパッケージングプロセスを監督する従業員。補助金支給が決まったインテルは今後5年間で1000億ドルを米国に投資する米アリゾナ州のインテルの半導体工場でパッケージングプロセスを監督する従業員。補助金支給が決まったインテルは今後5年間で1000億ドルを米国に投資する Photo:Intel

 米半導体産業の発展には、米政府の姿勢が極めて重要になる。そんな米国の戦略の一端を垣間見ることができるのが、23年末に商務省が発表した報告書だ。

 報告書によれば、商務省は世界3760カ所の半導体関連施設の運営側にヒアリングを実施。最先端の半導体製造を米国に戻すためには、解決すべき五つの構造的な課題があると結論付けている。