金利で明暗! 銀行絶望格差#12Photo:JIJI

金利上昇もどこ吹く風、愛知県では“名古屋金利”と称されるほどの熾烈な低金利競争が続いている。そんな金融激戦区で、愛知銀行&中京銀行の統合に次ぐ再編機運が加速している。特集『金利で明暗! 銀行絶望格差』(全16回)の#12では、名古屋銀行の頭取人事から、その実情をひもとく。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

愛知県で高まる地銀再編機運
名古屋銀の創業一族「加藤家」が鍵

 愛知県の地方銀行かいわいが、このところ混沌としている。

 そもそも愛知県は、低金利競争が長年にわたって続く激戦区だ。メガバンクの三菱UFJ銀行や地銀の他、信用金庫が多数ひしめく。

 例えばトヨタ系の下請けの中小企業が多い三河エリアでは、岡崎や碧海、豊橋、豊川、豊田と、とにかく信金の数が多く、そして強い。「よく“名古屋金利”と言うが、名古屋市はまだまし。信金が強い“三河金利”は地獄で、地銀は相当苦戦する」(地銀関係者)。

 また、自動車産業にはEV化や脱炭素化の流れが押し寄せている。愛知県で圧倒的なシェアを誇る三菱UFJ銀も危機感は強い。同行の中部拠点統括・小野寺雅史常務執行役員は「われわれの主要顧客である1~3次サプライヤーだけではなく、ケース・バイ・ケースで信金との連携を強化することが、今後のサプライチェーン全体を支える上で重要な課題になる」と話す。

 愛知県のトップ地銀も数年前から対応を進めている。名古屋銀行営業企画部営業戦略グループ課長の舟戸浩氏は「4年以上前に先んじて自動車産業サポート室(現自動車サプライチェーン支援室)を立ち上げた。中小零細サプライヤーは上位サプライヤーに比べると電動化対応等が進んでいないケースも多く、銀行のサポートの在り方が非常に重要な戦略になる」と指摘する。

 このような環境下、2021年12月に合併を発表したのが、愛知銀行と中京銀行だった。そして今、早くも次の再編がささやかれ始めている。舞台は名古屋銀だ。

 愛知県でようやく動き始めた地銀再編のヒントは、頭取人事に隠されている。その鍵を握る名古屋銀の創業一族、加藤家を巡る人事と、新たな再編の行方に迫った。