経営者が学ぶことで
デジタル活用が広がる

 デジタルアダプションを推進するカギはどこにあるのだろうか。高山氏は「ベンダーからするとツールありきになりがちですが、それでだけでは進みません。人、組織、プロセスが重要なのです」と指摘する。

 亀山氏は「可視化も大事ですが、ベースとなるITリテラシーの底上げも必要です。最も重要なのが経営トップ。経営者の理解度、意識、本気度が最優先事項です。経営者自身がデジタルを学んでいない可能性もあり、そこも含めたリテラシーの底上げが必要なのです」と語る。

 経営者の役割の重要性を指摘するのは松本氏も同じだ。「現代の企業経営に求められているのは、テクノロジーの活用です。生産性が高いとされる海外企業のトップにエンジニア出身者が多いことからもわかります。CEOが自ら学んでアップデートしなければ、会社の生産性が上がるわけがありません」。

 松本氏が最近受けたハーバードビジネススクールのエグゼクティブトレーニングには、欧米の大企業のCEOたちが学びに来ていたという。日本では部長クラスになると新しいことを学ばなくなる傾向が強いが、それでは競争に打ち勝つことはできない。特にデジタルに弱い経営者というのは今後成立しなくなってくるだろう。

 従業員にとってもそういう傾向が強まることが予想される。田中氏は「デジタル活用が企業の競争優位を左右するようになり、従業員にもデジタルリテラシーが不可欠な時代になっています。立ち遅れている中小企業が対応していくためにもデジタルアダプションが広がることを期待しています」と話す。

日本デジタルアダプション協会
監事
弁護士
田中康晃1976年神奈川県生まれ。青山学院大学法学部卒。ツーカーセルラー東京(現KDDI)に勤務した後に司法試験に合格し、2007年に弁護士登録。青山学院大学法科大学院非常勤講師、衆議院議員秘書なども経験し、現在は田中・石原・佐々木法律事務所に籍を置く。

 今後、同協会では市場調査などを行ってデジタルの活用状況を把握するとともに、デジタルアダプションのためのガイドラインを作成し、関連団体と協力しながら標準化に向けた取り組みを進めていくという。

「コロナ禍によって日本全体のデジタル化は急速に進んでいます。デジタルの力を企業の競争力につなげるデジタルアダプションは、日本復活のための最後の重要なピースです。業界の枠を超えてしっかりと普及させていきたい」と高山氏は意欲を語った。

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一般社団法人 日本デジタルアダプション協会
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