5億ドルを投じ「今月末には大きな成果を発表できる」
ドバイ王子が香港を訪問し、大人気に

 それからほぼ1年。陳財政長官は国家安全条例の成立とともに、すでに今年2月までに、58のファミリーオフィスが開設され、さらに100超が現在開設を検討中、あるいは準備、さらには拡張を進めていると明らかにし、「今月末には大きな成果を発表できる」と笑顔を見せた。

 それが前述のシェイク・アリ・ビン・ラシェド・アール・マクトゥーム氏による5億米ドルを投じたファミリーオフィス開設だった。この件が明らかにされると、香港メディアはすぐさま、聞き慣れない中東名を回避するように同氏を「ドバイ王子」と呼び始めた。

 国家安全条例施行の週末には、「待ってました」とばかりに政府はファミリーオフィスをテーマにした投資シンポジウム「Wealth for Good」を開催。ドバイ王子はオフィスオープニングを前に香港入りし、シンポジウムに登壇して自身の香港への投資について講演した。

 さらに、香港の主要銀行である恒生銀行がバックアップする恒生大学とも協力覚書を交わし、学生との交流や奨学金、スポンサーシップなどへの協力を約束。大学側は同王子に名誉教授の称号を送った。そして、同王子はシンポジウムの出席者と共に、李家超・行政長官主催のパーティーに出席して歓談するなど、香港側は政府も民間も王子のオフィス開設を大歓迎する様子が日々、報道に流れ始めていた。

 ところが、である。