現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】「胃腸が弱い人」が食べ方で気をつけるべき1つのことPhoto: Adobe Stock

リーキーガットに注意する

 問題を悪化させるのは、消化管の炎症が引き起こす腸管バリアの損傷である。

 これがリーキーガット(腸管壁浸漏とも呼ばれる)だ。

 さまざまな事象が腸管バリアを傷つけ、腸の透過性を高める。

 リーキーガットの原因として既に述べたような現代のライフスタイルが及ぼす影響の他に、抗生物質の使用、環境内の毒素、その他の薬剤(特に抗生物質、イブプロフェンやナプロキセンといった非ステロイド系抗炎症薬)、寄生虫感染、カンジダなどの真菌の異常増殖、アレルギー性食品の摂取、胃酸分泌低下、膵機能不全(消化酵素の産生不足)などが挙げられる。

 腸管バリアが損傷すると、食物の粒子や細菌の毒素が漏れて血中に入り込む。これが全身性炎症を引き起こしてエネルギーを大きく消耗させ、免疫細胞を食物の粒子にさらすことで、身体が食物に対して異物であるかのような反応を見せ始める。この段階で自己免疫疾患や炎症性疾患を発症する可能性がある。

 もしあなたが、お腹にガスが溜まる、膨満感、軟便、過敏性腸症候群といった消化器異常に悩んでいるなら、リーキーガットかもしれない。

 リーキーガット症候群の兆候には他に、食物不耐性、季節性アレルギー、湿疹、自己免疫疾患、慢性疲労症候群(あるいは単にいつも疲れている状態)、不安症やうつ病といった気分障害、栄養十分な食事をしても体重が減る、関節の痛みや腫れ、集中力の低下、カンジダ菌の異常増殖や小腸内細菌異常増殖症(SIBO)の診断などがある。

リーキーガットが自己免疫疾患につながる仕組み

 免疫力が落ちた状態でストレスや感染などの環境障害にさらされ、これに遺伝的性質が組み合わさると、自己免疫疾患を発症するおそれがある。

 自己免疫疾患とは、基本的に、身体の免疫系が誤って自身を攻撃することを指す。

 自己免疫の仕組みはこうだ。身体は本来、耐性というものを保持しており、それは身体の一部と外来の病原菌の区別がつくことを意味する。

 私たちの免疫系は、ウイルスや細菌といった感染を引き起こす微生物に存在する特定のペプチドを認識する。免疫細胞はこうしたペプチドを特定すると、これを攻撃する。

 しかし、過剰に活性化した免疫系は、体内細胞で見つかるよく似た抗原と、消化管から漏れ出た未消化の食物粒子を混同することがある。

 すると身体は自身を攻撃し始め、消化管をターゲットにしたり、神経細胞や皮膚細胞、膵臓細胞、関節組織を攻撃し損傷したりするのだ。

食べる食品の種類を増やす

 炎症を抑え、腸の粘膜内層を修復し、悪玉菌に対する善玉菌の割合や腸内微生物の多様性を高める(腸内の微生物の種類を増やす)ことで、リーキーガットを治すことができる。

 腸内の有用微生物の種類を増やす最良の方法のひとつは、食べる食品の種類を増やすことだ。

 季節に応じてさまざまな旬の果物や野菜を食べるようにしよう。複数の動物性タンパク源と植物性タンパク源(耐性があれば乳製品も)を組み合わせて、多様なタンパク質を摂るよう心がけよう。多種多様な脂肪を摂るようにしよう。

 また、マイクロバイオームの栄養になるポリフェノールを含むさまざまな種類のハーブやスパイスを使うのもお勧めだ。

 マイクロバイオームの健康を高め、血糖バランスを改善する食事のもうひとつの重要なポイントが食物繊維である。マイクロバイオーム内の善玉菌は食物繊維を餌にしているからだ。

 食物繊維は野菜、果物、ナッツ類から摂るのが最適とみられる。野菜・果物・ナッツ類を軸とした食物繊維の豊富な食事を摂った被験者群と、穀物と豆類を軸とした食物繊維の豊富な食事を摂った被験者群を比較したある研究では、野菜・果物・ナッツ類を軸とした被験者群のほうがより良い結果を示した。

 興味深いことに、運動もマイクロバイオームの多様性に大きな役割を果たす。

 運動は腸内の善玉菌の量を増やし、免疫力を押し上げ、腸管バリア機能を改善し、機能的代謝能を高めることがわかっている。

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)