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最近の若者は、親や教師から厳しく怒られることがほとんどなく、ほめられて育ち大人になった人が多い。こうした人たちはどうしても打たれ弱く、注意や叱責をされるとがっくりと落ち込んでしまい、ネガティブな気持ちに耐えられなくなりやすい。うっかりするとそのまま会社に来なくなったり、退職してしまったり……というケースもある。こうした人たちに対し、どのように接したらいいのだろうか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

※本記事は『「指示通り」ができない人たち』(日経プレミアシリーズ)から抜粋・再編集したものです。

ネガティブな気分に耐えられない

 ほめられて育った人が増えるにしたがって、ほめられるのが当たり前といった感じになり、ネガティブな状況に耐えられない心理傾向が広まっている。

 ほめられて育った人たちによく見られる特徴として、注意されると反発する心理傾向がある。絶えずほめられてきた人は、ポジティブな気分にしてもらえるのが当たり前という感受性を持つ。そのため、叱られたり注意されたりしたときのネガティブな気分が耐えがたいものとなる。

 そんな時代ゆえに、多くの職場では極力ほめるようにしており、厳しいことは言わないようにといった対応が取られている。しかし、仕事に慣れない人物を一人前の戦力に鍛え上げていくには、ときに注意することも必要になる。それで注意すると、あたかも自分を全否定されたかのように感情的な反発を示す者もいる。

 そのような心理傾向を持つ若手に手を焼く経営者や管理職も、今では珍しくない。ある経営者は、その戸惑いについて、次のように語る。

「若い人たちに対しては、厳しいことは言わないようにと従業員たちには言ってあるんです。でも、人によっては、そんなのは納得がいかない、厳しいことを言われて自分たちは仕事が一人前にできるようになったんだっていう人もいるんですよ」

『そう言いたくなる気持ちもわかりますよね』

「私自身、そういう気持ちもあります。なんでこんなに弱くなっちゃったんですか。私たちが若かった頃は、先輩や上司から厳しいことを言われるのは当たり前だったし、それで鍛えられたと思うんですけど」

『そうですね。時代が大きく変わってしまいました。厳しく育てられた上の世代との感受性のギャップが、さまざまなトラブルを生んでいるといった感じがありますね』