その後は、基本的に口を挟まずに現場の当事者に取り組んでいただき、必要に応じて私が軌道修正のヒントを提示していきます。

 このように、指導ではなく、あくまでもクライアントに「寄り添う」ことを重視してサポートするというスタンスを大切にしています。

 いっときの問題解決で終わるのではなく、カイゼンのプロセスを通してクライアント企業にナレッジが蓄積されて、その後は自走できるようにサポートすることが大事だと考えています。

クライアントに行った
「カイゼン」の数々

 斜陽になる中小企業は、節税と称して、経営者が公私混同の経費処理をしているケースが少なくありません。

 ある会社ではコロナ禍でキャッシュフローが悪化し、税金の支払いを2年間猶予してもらえました。その間に、会社のムダを徹底的に見直すことを提案しました。

 そのなかには、社長は「ムダではない」と考えていても、客観的に見ると明らかに公私混同であり会社には何のメリットも与えていないものがありました。

 まず、会社のお金で親族全員に生命保険をかけていた。どう考えても論外なのですが、社長は「家族を守るためにこの保険は必要だ」という理屈でした。

 また、この会社では社用車を社長がプライベートでも使用していました。社用車もムダの一つだったのですが、社長は「自分の足になっているので売れない」と。でも、それはプライベート用の車を個人の名義で買えばいいだけの話です。

「こういうこと一つひとつが足かせになって、猶予された税金を支払えなくなりますよ」と提言しても聞く耳を持ちませんでした。

 結局、税金滞納で税務署から財産を差し押さえられ、コンプライアンス違反で取引先も離れていき、最終的には廃業することになりました。

 ある企業では携帯電話を会社で10台契約していました。そこで、その10台の使用頻度はどのくらいなのか現状を見える化しました。

 社長は個人でも使うので、もちろん使用頻度は高いわけです。でも、会社には当然、固定電話があり、それ以外の9台はそれほど使われていませんでした。

 そこで、固定電話と携帯電話の料金や使用頻度などを考慮し、必要のない固定電話と携帯電話はすべて解約することになりました。