日本の農業の労働生産性は米国の40分の1

——VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代とも呼ばれています。国内のさまざまな市場が縮小傾向にある中で、アグリビジネスを拡大するためにはどのような取り組みが求められますか。

三村 イノベーション機会発見の本質とは、変化をチャンスに変えていくことです。そういった意味では、VUCAの時代はまさにチャンスにあふれている時代です。変化をどのように捉え、課題設定をするかが要諦になってくるでしょう。地球環境問題であったり地域の課題であったり、課題ドリブンで事業を創出し、そこに10倍思考でイノベーションを起こしていくことが望まれています。

国内に目を向けると、122万人にまで減少した農業生産の担い手不足や、平均年齢68歳という生産者の高齢化、食料自給率は38%とOECD加盟国においても低い水準となっています。特に労働生産性においては、米国の40分の1という評価もあり、大きな課題です。

しかし課題が明確である分、誰にどんな価値を提供できるのかといった市場の可能性を探求する余地は十分にあると思います。むろんそこでは既存の商品・サービスにはなかった新しい価値を創造していくことが不可欠です。また、天気8割といわれる農業において、データに基づいた栽培方法や完全閉鎖型での栽培などテクノロジーの介在余地があり、これらに取り組むことで、大きなチャンスが得られると捉えています。そういった意味では、超節水による栽培を実現した豊永さんの事業は大変興味深かったです。

次のページでは独自の特許技術でイノベーションを起こした豊永氏の成功事例から、アグリビジネスの可能性についてひもといていく。