企業の法務にビジネスの管理手法やテクノロジーを導入し、経営へのさらなる貢献を目指す「リーガルオペレーションズ」の考え方が日本でも注目され、法務部門の改革への取り組みが加速している。その最前線を示したオンラインセミナー「Legal Agenda 2024 法務機能の高度化とリーガルオペレーションズの実践」(ダイヤモンド社ビジネスメディア局主催)において、BoostDraft CRO/共同創業者であり、弁護士でもある渡邊弘氏は、「企業は導入したリーガルテックを見直す時期に入っている」と語った。真意はどこにあるのだろうか。

リーガルテックは「見直しの時期」に入った

BoostDraft
CRO/共同創業者・弁護士
渡邊 弘
<プロフィール>西村あさひ法律事務所にてM&A/ファイナンス・国際取引を中心として契約業務に従事。その後、米スタンフォードロースクール(LLM)のリーガルテック専門機関Codex等で英米リーガルテック調査を行う。2019年より米スタンフォード経営大学院(MBA)にて経営を学ぶ傍ら、The Corporate Legal Operations Consortium (CLOC)のJapan Capterの創業メンバーとなる。法務分野の業務効率化余地を探求すべく各国法務関係者へのインタビューを実施し、アイデアを具現化して21年にBoostDraftを創業しCROに就任。

 渡邊弘氏は、日本版リーガルオペレーションズ(※1)を構成する八つの重要項目「CORE8」の中で、「テクノロジー活用」に着目。「企業は導入したリーガルテックを見直す時期に入っている」とする。

 日本版リーガルオペレーションズの「テクノロジー活用」は、その活用レベルで3段階に分類される。レベル1は「情報収集の段階」、レベル2は「テクノロジーを導入する段階」。レベル3は「導入したテクノロジーを使いこなす段階」だ。渡邊氏によると、現在はレベル2の段階にある企業が増え、大企業ではレベル2の段階を終えようとしているケースも多いという。

※1 「日本版リーガルオペレーションズ」は、米国中心に語られてきたリーガルオペレーションズの議論を参考にしつつも、日本の現状に沿うような「日本版」の在り方・成長モデルを検討するために集まった有志の研究会「日本版リーガルオペレーションズ研究会」が提唱する。2021年4月にそのフレームワークとなる「CORE8」を発表した。
 

 渡邊氏が着目するのは、レベル3に達しようとしている企業だ。この段階では、いったん導入したリーガルテックを改めて評価し、実際に業務効率化等の成果につながっているのかを見直すことになる。こうした段階を迎える企業が増える一方で、2023年前半ごろから、リーガルテックの導入がうまくいっていない企業も散見されているという。

 次ページでは、リーガルテック導入が成功しているか否かを判断する方法を紹介しつつ、導入したリーガルテックの「見直し」を行う上で重要になる三つのポイントを詳しく解説していく。