コンサル大解剖Photo:SimpleImages/gettyimages

ビッグ4最大手のデロイト トーマツ コンサルティングの業績悪化の一因とされるのが、行き過ぎた人事ルールの存在である。ルールの過剰適用でコンサルタントが昇格できない異例の事態も生じ、現場の萎縮を招いている。長期連載『コンサル大解剖』内で10回前後にわたり配信予定の特集『デロイト内部崩壊』の第8回では、恐怖支配を推し進めてきた“秘密警察”ともいうべき組織の実態とともに、実質的に”クビ”に等しい厳罰ルールの中身を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

デロイトが人事関連機能を統合
Ethicsは“秘密警察”との揶揄も

 人事関連機能を統合――。昨年12月21日、デロイト トーマツ コンサルティングが開いた全社会議。佐瀬真人社長はコーポレート機能を抜本的に見直すと明らかにした。

 本特集の『【スクープ】デロイトがビジネス部門を半減!異例の大規模組織改革の「劇薬」がはらむリスク』でも解説したように、全社会議ではフロント組織の大規模な再編を打ち出した。同じ会議でフロント再編と並ぶ、改革の柱として挙げられたのが、人事機能の統合である。

 具体的には、BHRL(Business HR Leader)、CPEO(Chief People Empowerment Office)、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)、Ethics(Ethics & Integrity)の四つの人事関連機能を集約する。

 デロイトは佐瀬氏がトップに就任した2019年以降、「メンバーファースト」経営を掲げてきた。その方針に沿って、社員のエンゲージメント向上を推進するCPEOなどの機能が立ち上げられ、拡充されてきた。

「網羅的に統合的に従業員価値を提供する」。佐瀬氏は全社会議で、人事関連機能の統合の狙いをそう説明した。これまでは複数の部署が個別に施策を打ち出してきたが、統合的な人事戦略の策定を目指すという。

 今回の再編は、肥大化していたミドル部門をスリム化することで、低下していた営業力の立て直しを図る狙いもある。

 実は、今回の再編の対象になった組織の中に、社内で営業力低下など業績不振の遠因となったと指摘される部門がある。それがEthicsである。

 倫理観を意味するEthicsは、内部通報などの窓口の役割を果たすほか、社内の人事ルールの策定などを通じてハラスメントなどの防止も担う組織だ。

 もちろん、企業において、ハラスメントの防止などは極めて重要なテーマである。ところが、そのEthicsが導入した人事ルールや過剰ともいうべきルール運用が社内の混乱を招いたばかりか、営業力の低下を引き起こし、業績不振を招いたのだ。

 では、社内で“秘密警察”とも揶揄(やゆ)されるEthicsとは。次ページでは、Ethicsの実態と、適用されれば実質的に”クビ”に等しい厳罰ルールの中身を明らかにする。ルールの過剰適用によって、コンサルタントが昇格できない異例の事態が相次いだ理由も解説する。