経験学習において、人事担当者が行える“リフレクション”支援を考える

人材育成の手法のひとつとして知られる「経験学習」で、ことさら重要なのが「内省的観察」のステップだろう。“リフレクション”と呼ばれるこの行動は、研究者によって多くのとらえ方(解釈)があり、正しい実践はなかなか難しいようだ。効果的な“リフレクション”を実現するために、マネジャーは部下をどう支援すべきか――それを説いた前回記事*1)に続き、今回は人事担当者が行える“リフレクション”支援を考える。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

*1 HRオンライン 「経験学習での、マネジャーから部下への“リフレクション”支援を考える」

 「二度と1on1をやりたくない」とつぶやく人もいる

 前回記事「経験学習での、マネジャーから部下への“リフレクション”支援を考える(*2)」で、1on1ミーティング(以下、1on1)の安易な導入には気を付けるべきだと述べた。理由は、導入がうまくいっていない1on1の話をよく聞くからだ。私がヒアリングした部下(1on1の受け手)の中には、「二度と1on1をやりたくない」とつぶやく人も存在する。目的や方法を現場に委ねすぎていたり、講演や動画学習、書籍を配布するだけのスキルアップでマネジャーに1on1を実施させるような1on1の場合は失敗する確率が高い。しかし一方で、オックスフォード・ブルックス大学のエレーヌ・コックスが「コーチングは、経験学習における経験、リフレクション、教訓化を統合し、機能させるための弁証法的プロセスと見なすことができる」と述べているように、リフレクション支援を考えるときにコーチングの一形態である1on1を導入する意義は大きい。

 では、どうすればよいのか。1on1が機能している企業は組織としての思いやサポートが明確で、スキルアップについても、継続的に粘り強く、スキル向上のためのワークショップが提供されている。

*2 HRオンライン「経験学習での、マネジャーから部下への“リフレクション”支援を考える」参照

 例えば、ハウス食品グループでは、2018年に一人ひとりの成長機会の創出と支援を目的に1on1を導入した。導入時には、グループ会社を含めた役員・所長・人事担当者を対象に説明会を実施し、「なぜ、1on1を導入するのか?」という「Why」と、「これから何をしていくのか?」という「What」を伝えている。加えて、社員向けのガイドブックを作って配布したり、管理職全員に1on1の基本の型を伝えるための学習会を開催したりしている。さらに、半期に1回、1on1アセスメントを実施し、実施率や満足度を全社員に対して発信し、質の向上に努めているという。結果、1on1の実施率は90%近くとなり、また、1on1の頻度や満足度が高い職場ほど、職場風土が良好であることが明らかになっている(*3)。1on1を機能させるためには、ハウス食品グループのように、粘り強く、そして、徹底的に施策の目的や理念を社員に打ち込み、1on1の質を向上させる取り組みが必要なのだ。

*3 HRオンライン「ダイバーシティを実現する、ハウス食品グループの“組織風土改革”とは?」参照