新卒採用の現在と未来――24卒の振り返りと25卒の課題を考える

2024年3月卒業予定者(以下、24卒)の採用活動がほぼ終了した。総じて、新卒採用活動のスケジュールは早期化しているようだ。2025年3月卒業予定者(以下、25卒)からは新しいインターンシップ制度もスタートし(*1)、採用担当者は、いままさに“冬インターン”などの対応に多忙な日々を送っていることだろう。例年、独自のアンケートに基づき、『学生の就職活動総括』と『企業の採用活動総括』を公表しているダイヤモンド・ヒューマンリソースの高村太朗さん(経営企画室・室長)へのインタビューから、24卒の結果と25卒採用に向けた課題を考える。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

*1 HRオンライン「25卒採用“インターンシップ改革”で、人事担当者が知っておきたいこと」参照

年々早まる内定獲得時期、過去最高の重複内定数

 さまざまな調査データからも明らかなように、新卒社員の採用市場は学生優位の「売り手市場」の様相が強まっている。それに伴い、企業の新卒採用活動(=学生の就職活動)は早まっているようだ。

高村 新卒採用スケジュールの早期化で代表的なのが、エントリーシートの受付開始時期です。昨年(23卒)は大手企業(従業員501名以上)も中堅・中小企業(同500名以下)も3月(卒業前年の3月)にピークがありました。しかし、今年(24卒)は3月(卒業前年の3月)が減り、2月以前の数字が高まった結果となっています。

 採用活動のひとつの山場である内定(以下、「内々定」と同義)出しも早まっています。学生が最初に内定をもらった時期を見ると、昨年(23卒)は、文系のピークは6月上旬でした。それが今年は2月以前が2ポイントほど上昇しています。企業側に聞いた調査でも、「内定を出し始めた時期」の早期化傾向があり、従業員規模を問わず、2月以前ないしは3月上旬の数字が目立ってきています。また、文系と理系を比べた場合、特に早期化しているのが理系です。学生が最初に内定をもらった時期について、理系では2月以前で10ポイントも上昇しています。

 23卒と24卒を比べた場合、採用人数にはどのような傾向の変化があるか?

高村 501名以上の企業で文系の採用人数を「増加」すると回答した企業は14.8%で、23卒から3.7ポイント減少した一方、理系は27.8%と、23卒から8.2ポイント増えており、大手企業で理系の採用意欲の高さが際立っています。これは、産業界におけるAIの普及やDXといった動きに連動していると考えられます。

 さらに、学生の「売り手市場」という点では、重複内定(別企業・団体による複数の内定)獲得の社数が24卒は平均2.94社で、過去15年で最高となりました。「1社のみ」の割合が減り、3社以上が6.5ポイント、6社以上も3ポイント近く増えています。かつては2社を割ったこともあり、「平均で3社近い内定を持っている」というのはすごいことだと思います。

新卒採用の現在と未来――24卒の振り返りと25卒の課題を考える

高村太朗 Taro TAKAMURA

株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース
経営企画室 室長

1998年、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社入社。法人営業として、首都圏と大阪で大手企業を中心に新卒採用支援や人材開発支援を担当。「ダイヤモンド就活ナビ」編集長、営業企画室長を経て、現職。「ダイヤモンド就職人気企業ランキング」「採用・就職活動の総括」をはじめ、新卒採用マーケットに関する調査・分析に携わっている。