地上侵攻で何が起きる?取材で見たガザ地区の悲惨な実情とは【池上彰・増田ユリヤ】パレスチナ自治区のガザ地区。

イスラエル軍のガザ地区侵攻で何が起きるのか。「天井のない監獄」と呼ばれ、「食糧支援を受けている人が8割以上、失業率は5割」というガザ地区の実態とは。パレスチナ自治区を取材したジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏が対談した。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)

取材でお世話になった人の
友人が犠牲に

池上 イスラエル情勢が混迷を極めています。報道によれば、ハマスの攻撃で始まった応酬により、イスラエル側の死者が1400人、ガザの死者は4651人(10月23日現在)に達しています。イスラエル側の高官は「ガザ市民に被害が出てもハマス壊滅を成し遂げる」と述べており、被害は拡大の一途をたどっています。

増田 イスラエルやヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の取材でお世話になった方に連絡をしたら、友人に犠牲が出たり、ガザに近いイスラエル南部で、パレスチナ人の支援活動をしていた女性が、家族もろとも連れ去られたりして捕虜になったといいます。なぜ、そんな目にあわなければならないのか。気が気じゃありません。

地上侵攻で何が起きる?
なぜエジプトは避難路を封じている?

池上 イスラエルがガザ地区に地上侵攻し、ハマス壊滅を目指すとなれば、ガザの地下に張り巡らされたトンネル内の隅々まで、総勢2万人を超えるというハマス構成員を探し出すことになるのでしょう。しかしハマスの拠点は市民の住居と隣接し、病院や学校を経営してもいますから、市民とハマスを区別するのは至難の業です。

増田 イスラエルは「ハマスの拠点のあるガザ北部への攻撃を行うので、住民は南部に避難せよ」と言っていますが、ガザ住民の中には「なぜ私たちがここを捨てて逃げなければならないのか」と、北部にとどまり続ける人たちもいます。

池上 市民であっても避難しない人は「ハマス扱い」されかねませんが、住民には「一度避難したら同じ場所には二度と戻ってこられないかもしれない」という不安があるのでしょう。エジプトが避難路を封じているのも、ガザ住民が避難後も元の所に戻れず、シナイ半島に難民キャンプが定着することを恐れているためです。

増田 バイデン米大統領は、イスラエルによるガザ占領は「大きな間違いだと思う」と述べています。しかしイスラエルが行っているヨルダン川西岸の入植の状況を見れば、ガザ地区の住民はイスラエルの言い分を信じることはできないでしょうね。