「待ったなし」の空き家問題に公民連携で取り組むコンソーシアムの本気度空き家問題は複雑で多面的。自治体など行政と民間企業による公民一体の連携が必要だ Photo:PIXTA

空き家問題は、社会構造に影響を及ぼす複雑で多面的な要素を内包している。それだけに、公民の連携による課題共有が不可欠だ。このほど発足した「全国空き家対策コンソーシアム」では、自治体など行政に向けて空き家対策に関わる情報を発信するとともに、政策提言や意見交換を通じて公民の協力関係を強化していく。

空き家問題に官民一体
コンソーシアム発足

 前回は、空き家問題に対して、テクノロジーで課題解決を図っているテック企業3社を紹介した。空き家問題は複雑かつ多面的な要素を内包しており、年々増加する空き家を減少させるには、一企業のソリューションだけではとうてい成果はおぼつかず、民間企業の力だけで解決するのは至難の業だ。

 空き家が増え、そこから生じる問題が顕在化していくのは、マスコミによる報道件数が年を追うごとに多くなっていることからも明らかである。また空き家問題は、少子高齢化や地方の過疎化、郊外地域の空洞化や産業構造の変化、周辺環境などとセットで報道されることが多いというのも大きな特徴だ。それだけ空き家をめぐる問題が、より大きな社会課題になっている証左であろう。

 もちろん国や自治体も手をこまねいていたわけではない。2023年に空き家対策特別措置法を改正し、管理不全空き家に対する自治体の裁量を強化。また、所有者不明の土地の発生を予防する方策の一つとして「相続土地国庫帰属制度」を創設し、相続した土地を手放して国庫に帰属させることを可能にした。不動産登記法の改正で、24年4月からは相続登記が罰則付きで義務化される。こうした中、京都市では、居住者のいない住宅に課税する「空き家税」を全国に先駆けて創設し、注目されている。

 こうした行政の動きと呼応して、前述の3社はそれぞれ自治体との連携を行ってきたが、単一企業で取り組むだけでなく、一歩踏み込み、それぞれ異なる専門分野で独自のノウハウを持つ企業が集まり、官民一体で空き家問題に総合的に対応していく協議体「全国空き家対策コンソーシアム」を23年9月に発足させた。

※ 管理不全空き家:管理が不十分で放置すれば「特定空き家」になる恐れがある空き家。