睡眠時無呼吸症候群は取り返しのつかない大惨事を招く可能性もある取り返しのつかない大惨事を招く可能性も (写真はイメージです) Photo:PIXTA

「いびきがひどい」「睡眠中に息が止まっている!と言われたことがある」「日中に耐え難い眠気がある」……。そんな症状に心当たりがある人は、睡眠時無呼吸症候群かもしれない。放置している人は少なくないが、仕事のパフォーマンスを低下させるばかりか、突然死の原因にもなる病気であることをご存知だろうか。職場や家庭での信頼と命を守るためにも知っておきたい睡眠時無呼吸症候群のリスクと最新治療について、専門医に話を聞いた。これを読めば、高いびきをかいて眠るのが怖くなるはずだ。(取材・文/医療ライター 福島安紀)

なぜ太っている人は
いびきをかきやすいのか?

 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に無呼吸、あるいは低酸素状態になって、日中に強い眠気を感じたり集中力が低下したりするなど、仕事にも影響が出る病気だ。そもそも、睡眠時の無呼吸はなぜ起こるのだろうか。

「太っていて首や喉の周囲に脂肪がついている人、あるいは、もともと下あごが小さかったり扁桃腺が大きかったりする人は気道が狭く、仰向けになって眠ると、息を吸った時の圧力で舌の付け根の部分が喉の奥に落ち込み、気道が塞がれたり狭くなったりします。この狭い気道を無理に高速の気流が流れるときに生じるのが、いびきです。さらに喉が塞がって気道が確保できなくなると、無呼吸になります」

 そう説明するのは、順天堂大学医学部附属順天堂医院睡眠・呼吸障害センター長の葛西隆敏氏。一緒に寝ている人にとって騒音でしかない「いびき」は、この病気の重要なサインというわけだ。

 睡眠時無呼吸症候群になると、大事な商談や会議のときに眠ってしまったり、夜中に何度もトイレに行ったり、怒りっぽくなったり性欲が低下する人もいる。このような影響が出るのは、どうしてなのだろうか。

「睡眠中に無呼吸か低呼吸になって酸欠状態になると、その度に脳が覚醒して起きているのに近い状態になって酸素を取り入れようとするので眠りが浅くなります。毎晩その状態を繰り返していると本人は眠っているつもりなのに寝不足になりますし、眠りが浅くなった時に目が覚めてしまったりトイレに行きたくなったりするのです」

 睡眠時無呼吸症候群かどうかの診断するためには、専門的な検査で、睡眠中に10秒以上無呼吸か低呼吸になる回数が1時間に何回起こるかを計測する必要がある。