話を本筋に戻すが、得てして法律の条文は常人には理解しがたくできている。だから法律を平易に、簡単な言葉で、簡潔に説明した文章は大いに重宝される。それに、一般人としてはその法律の概要がつかめれば十分で、理解しがたい詳細はむしろ御免である。

 そうした心理がある中で、SNSという比較的フランクな場でフッと入ってくる「口座管理法とはこれこれこういうもの」という、少し頭を使って読まないと理解できなさそうな投稿は、読むだけで「知的な活動をした」「多くの人が興味を持たないであろう法律を率先して学んだ」という満足感・達成感をユーザーにもたらす。

 そして人はいったん満足すると次なるアクションをあまり起こさない。つまりは今得た情報を精査することなく、誤解したまま完結するケースが多くなる。これがSNSにおけるデマ投稿が広まりやすい原因のひとつである。

ネーミングに満ち溢れる「管理」の気配
実は全く違う口座管理法と改正ナンバー法

 こと「口座管理法」においては、そのネーミングも誤解される悪しき一助となったようである。ある人は、「ネーミングが『国が我々の口座をどう管理するか』という気配に満ち満ちている」と語った。

 実際は「口座の新しい管理方法を提案します」という文脈での「管理」なのだが、確かに字面だけだと「口座」を「管理」ということで、全体主義的な印象を受けてしまう人もいるのかもしれない。

 XやTikTokで拡散した口座管理法に関するデマは、そうした些細な不安を大いに煽るものであった。筆者が確認したところ、マイナーチェンジの亜種を含めると何パターンかあるようだが、デマはおおむね以下のような内容のものだった。

「マイナンバーと口座のひも付けは任意だが、『自治体からの書類に返送する』といった具体的な”拒否”のアクションをしないと、勝手に自動的にひも付けが行われる可能性がある。そうすると国に個人情報をがっつり監視&管理されるし、情報漏洩リスク甚だしい」