組織を壊す「自分ファースト」な社員たち 木村政美写真はイメージです Photo:PIXTA

4月1日から入社する新入社員。しかし入社直前になって、研修が東京ではなく大阪で行われること、大阪に転勤の可能性が高いことを知らされた。「会社にダマされた。求人票と労働条件が違うのは法律違反ではないのか?」というが、実際のところどうなのだろうか。総務部長の問いに対し、社労士の答えは……。(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
機械部品を扱う専門商社で従業員数300名。
<登場人物>
A:4月入社の新卒社員で22歳。中高時代はバスケットボール部に所属していた
B:甲社の総務部長で人事労務の責任者(以下「B部長」)
C子:Aの彼女。高校の部活の先輩で都内の大手美容室に勤務している27歳。Aの自宅近くに実家があり、ほぼ毎日会っている
D:甲社の顧問社労士

春から本社が移転、新人研修も東京ではなく大阪で実施

 都内にある私立大学の経済学部に通っていたAは、入学以来リモート中心の授業に身が入らず、4年生になってからあわてて未履修の単位を取得した。その甲斐あって留年はなんとかまぬがれたものの、就活には完全に乗り遅れ、3月上旬、大学の求人票で見つけた甲社の採用試験(筆記と面接)を受け、内定を得た。

 3月下旬の午後、Aは入社に関する諸手続きを行うため甲社を訪れた。応接室で待っているとB部長が現れた。2人はあいさつと軽い雑談を交わした後、B部長はAに「労働条件通知書兼雇用契約書」を提示し、記載内容を一通り説明した。

「Aさんの入社日は4月1日で、6月末までの3カ月間は試用期間で本社勤務になります。この期間は、入社式と2週間の集合研修、その後各部署に配属されて上司や先輩から直接指導を受けながら仕事を覚えていきます」

「分かりました。本社って、ここですよね?」

「実は1カ月前に本社を大阪に移したので、今年度の新入社員から、試用期間中は大阪勤務になります」

「えーっ、試用期間中は大阪勤務なんて求人票には書いてなかったですよ。自分は生まれも育ちも都内だし……。東京で研修とか受けられないんですか?」

「この場所は4月から東京営業所になります。ですからここに在籍するのは関東エリアの営業担当と総務が1名だけで、あとの社員は大阪に転勤するか地方の営業所に配置転換されています。だからここでは新入社員の研修はできないんです」

「そんな……」

「大阪での住居は、社宅としてワンルームマンションを契約しています。マンションには家財道具も一式揃っているので心配はいりませんよ。それに、試用期間が終われば営業職として東京に異動することもできますよ」

 Aの不安そうな表情を見たB部長は、大阪に行けない理由をたずねたが、Aは答えに詰まった。