飲み屋にいるビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事で努力して成果を出せば、人事の評価はあがるし、出世の道も開けるはず……。そんな考えで日々の業務に向かっている会社員たちは、認識を改めたほうがいい。大手コンサル勤務時代に8000人以上のビジネスパーソンの働きぶりを見てきた筆者によれば、努力は「報酬を得るための苦行」ではないという。社内で評価される人間になるためには、別の立ち回りが必要だ。※本稿は、安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

仕事で成果を出していても
社内評価が上がらない理由

 私が社会人2~3年目だったころ訪問した顧客先で聞いた、新人と部長との会話をよく覚えている。会社内の人との接し方について、良い知見が得られたからだ。

新人 部長、なんで社内営業をしなくてはいけないんですかね。
部長 社内営業?
新人 この前、部長は我々に、「先輩と飲みに行って自分を売り込め」って言っていたじゃないですか。
部長 ああ、その話か。あれから先輩に声をかけたか?
新人 やっていません。なんかそういうことって、やりたくありません。人に媚びたり、へつらったりするのはよくないことだ、って言うじゃないですか。まして、「先輩と仲良くする」ことと、「成果を出す」ということは別だと思うんです。そもそも「先輩に気に入られるための活動」というのは、お客さんのほうを向いていません。

 私は、新人にありがちなその悩みに対し、部長がどのようにたしなめるのか気になった。だが、部長から発せられたひと言は、意外なものだった。

部長 なるほど、その通りだな。嫌なら別にやらなくていいよ。
新人 え?
部長 嫌ならやらなくていい、と言ったんだ。
新人 そうですか……。
部長 単なるおせっかいだからな。
新人 でも、なんであんなことを言ったんですか?
部長 世の中にはいろんな人がいるからさ。
新人 どういうことですか?
部長 成果を重視する人もいれば、仲の良さを重視する人もいる。血縁を重視する人もいれば、学歴を重視する人もいる。世の中にはいろんな人がいるんだ。だから、「成果を出せば認められる」というのは、建て前としては正しいが、実際の社会ではそういうわけにもいかない。
新人 でもここは会社です。成果が重要でしょう?
部長 その通り。でも、そういった考え方を人に強制するのは、「先輩と飲みに行け」というのを強制するのと同じだろう?

 いつの間にか、新人と部長の立場が逆転していた。新人は部長の言葉をかみしめているようだ。