企業が自社ミュージアムの「使い勝手の良さ」に気付き始めた!企業ミュージアムの可能性企業ミュージアム研究家/サイエンスライター
古田ゆかり
北海道大学大学院修了 博士(文学)。企業博物館研究において博士号取得。元北海道大学特任准教授。各地の企業ミュージアムを取材し企業ミュージアムのインタビューや展示調査を行うほか、企業CSRを中心に科学技術コミュニケーション活動に取り組み、執筆のほか教育プログラムの開発、実施を行う。近著 『企業博物館とは何か』(青弓社)。

CMやプレスリリースでは伝えられない企業の情報を提供できる、それが企業ミュージアムだ。自社の歴史や製品、企業理念を伝えられる恒常的な施設で、多様なステークホルダーと直接触れ合うことができる空間。ここから企業のファンづくり、ブランディングにつながっていくのが、今、企業ミュージアムが注目される所以だろう。

企業ミュージアムは、社会教育施設として一般の来館者や観光客を受け入れる社会貢献事業と捉えられることが一般的だ。だが、自社やグループ会社、顧客を対象として、社員の育成やブランディング、営業活動に活用されるなど、経営に資する役割は決して小さくない。

企業ミュージアムについて企業に対して行ったアンケート(※)では、「対象者はだれか」の問いでトップになったのは「顧客」という回答であった。自社の営業担当者が顧客を案内し、口頭だけでは伝わりにくい自社の歴史や企業理念を伝える格好の場所というわけである。展示空間で一定の時間を共有し対話が促進されるのも、具体的な製品や歴史的な資料があってこそだ。

※出典:『企業博物館とは何か』古田ゆかり著 青弓社 2023より