すぐに業績にインパクトがあるかは未知数。
しかし、今取り組まなければデメリットが

経営層の方にダイバーシティ経営の話をすると、必ずといっていいほど出る質問があります。それは「業績は上がるんですか」というものです。「上がります」と断言できればいいのですが、それほど単純なものではありません。ダイバーシティ経営というのは、一つの「人事施策」です。それが業績にどのようなインパクトをもたらすかというのは、短期ではなく長期で見なければなりません。

例えば、ダイバーシティ経営に取り組んだときに、ロシアによるウクライナ侵攻のような大きな出来事があると、短期的にはその外的要因の方が業績への影響は大きい。ただ、5年、10年といった中長期的なスパンで見れば、企業の足腰が強くなっていることを継続して取り組んでいる企業は実感しています。複雑で難しい課題を解決する中で多様な人材が役に立った。会社の雰囲気が大きく変わった。そんな声が私の元にも届いています。

もちろん不満は出ます。既得権益を持っている人にとっては、いいことばかりではありません。部長の椅子も、管理職の席も、その数は限られているからです。その人たちが「女性の管理職が増えたら、自分の権利が奪われる」と思ってしまうのも仕方のないことです。しかし、確実に言えることは、経営環境がめまぐるしく変わる今、取り組みが遅れることは致命的ということです。

雇用するだけでは駄目。大切なのは誰もが活躍できる環境整備

改めて、ダイバーシティ経営とは何かを考えてみましょう。簡単に説明するなら、「人材の多様性を経営価値につなげる戦略」です。「DE&I」などとも呼ばれますが、これはDiversity Equity and Inclusion の頭文字を取ったものです。

ダイバーシティは企業における「人材の多様性」です。女性、障がいのある人、中途採用者、LGBTQ、シニアなど、さまざまな特性を持つ人を雇用することです。もちろんこれら全ての人々を雇わなければならないのではありません。各企業がどこに注力するかを決めればいいのです。

次ページからはインクルージョン(包括)とエクイティ(公平性)、そして企業が取るべき女性が活躍するための対応策について詳しく紹介する。